Q.被相続人田中一郎さんの相続人等の状 況は以下の通りです。この3人の相続税の納税義務はどうなりますか?
相続人 | 住所等 | 取得財産 |
---|---|---|
長男 | 東京に在住 | 日本の財産 アメリカの不動産 |
次男 | ニューヨークに居住 アメリカ国籍取得(日本国籍なし) | 日本の財産 イタリアの不動産 |
三男 | イギリスに居住、日本国籍あり | 日本の財産 イギリスの不動産 |
A.相続人の住所と国籍が日本にあるか、海外にあるか、また、相続により取得した財産が日本国内にあるか海外にあるかで変わってきます。
1 納税義務者の種類
居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者、制限納税義務者(特定納税義務者を除く)の3種類があります。どの納税義務者のタイプとなるかは、相続人の住所、国籍、相続した財産が国内にあるか(国内財産)国外にあるか(国外財産)によります。具体例で見てみましょう。
(1) 長男の住所が日本にある場合(一時居住者を除く)
在留資格の一時居住者を除き、財産を取得した時に住所が日本にあれば、この場合は、財産が日本国内にあろうが国外にあろうが、在留資格の一時居住者を除き、財産を取得した時に住所が日本にあれば、どの財産を取得しようと、居住無制限納税義務者として相続税の納税義務が生じます。国籍は関係ありません。
在留資格の一時居住者である場合は、被相続人が在留資格の居住者又は非居住者ではない時に、同様の全世界の財産に課税されます。
※一定の在留資格がある相続人は居住制限納税義務者に該当し、日本の財産相続税申告対象となります。
(2) 次男の住所がアメリカにあって、アメリカに国籍がある場合
日本国籍がなく日本に住所のない個人は、被相続人が在留資格の居住者又は非居住者でない時に、全世界の財産に課税されます。
被相続人が在留資格の居住者又は非居住者であるときは、日本国内にある財産にのみ課税されます。
(3) 三男の住所がイギリスにあって、日本国籍がある場合
日本国籍があって日本に住所のない個人は、相続開始前10年以内に日本に住所があった場合には、全世界の財産に課税されます。
相続開始前10年以内に日本に住所が無かった場合には、被相続人が在留資格の居住者又は非居住者ではない時に、全世界の財産に課税されます。被相続人が在留資格の居住者又は非居住者である時には、日本国内にある財産にのみ課税されます。
2 国内財産と国外財産
財産が国内にあるか国外にあるかは相続開始時にその財産がどこにあるかで判定しますが、下記のものは注意が必要です。
- 銀行の預金は預け入れている銀行の支店の場所が国内にあるか国外にあるかによって判定します。例えば、国内にあるスイス銀行の預金は国内財産になります。
- 株式はその株式を発行している法人の本社が国内にあるか国外にあるかによって判定します。例えば、日本の証券会社に預けてある外国株式などは国外財産となります。
3 納税義務者のタイプが変わるとどうなるか
居住無制限納税義務者の場合は相続税法上の全ての有利規定が受けられますが、非居住無制限納税義務者・制限納税義務者の場合は次の規定の適用が受けられなくなります。
(1) 非居住無制限納税義務者
- 障害者控除の適用がありません。
(2) 制限納税義務者
- 未成年者控除・障害者控除の適用がありません。
- 債務控除(Q12参照)できる債務に一定の制限が加わるとともに、葬式費用は控除できません。