Q.生命保険は契約の仕方によって受取り時の税金の取り扱いが変わるそうですが、内容を教えてください。
A.生命保険は、保険契約者(保険契約を締結し保険料を支払う人)、被保険者(保険事故の対象となる人)、保険金受取人(保険事故が発生した際に保険金を受取る人)を決めますが、この組み合わせによって、対象となる税金が異なります。
(1)保険金の税金は契約方法で変わる
生命保険に加入する際に大切なのが「保険契約者」「被保険者」「保険金受取人」を誰にするかということです。
この組み合わせによって、保険金を受取る際の税金の種類が異なり、結果として税額も大きく違ってくるのです。実際に税額がどう違ってくるのか、具体的に見てみましよう。
(2)「契約者」と「被保険者」が同一であれば相続税の対象になる
図表中の①②を見るとわかるように、相続税の対象となる契約は、契約者と被保険者が同一人の場合です。相続税には基礎控除という非課税枠が有り、5,000万円+1,000万円×相続人の数の金額を控除できることになっていますが、基礎控除を超える金額については、10% 〜 50%(遺産の大小や相続人の数による)の税率がかかります。
なお、 死亡保険金受取人が契約者の相続人の場合には、 基礎控除とは別枠で、 500万円×相続人の数の金額を保険金から控除できます(死亡保険金の非課税:図表①)。つまり、保険金以外の財産も含めて、非課税枠以内なら相続税はかからないことになります。ここを上手く活用すれば、節税になるわけです。
(3)「所得税・住民税の対象となる契約」は契約者と受取人が同一の場合
また、所得税・住民税(一時所得)の対象になる契約は、契約者と保険金受取人が同一人の場合です(図表③)。つまり、(死亡保険金-累計払込保険料 -特別控除50万円)×1/2が一時所得の課税対象になります。
その後、 他の所得と合算(総合課税)し、所得税・住民税合計で15% 〜 50%(所得金額による)の税率がかかってきますが、1/2が課税対象になるので、最高でも25%の負担ですむわけです。
(4)「贈与税の対象になる契約」は契約者≠被保険者≠受取人
贈与税の対象になる契約は、契約者と被保険者と死亡保険金受取人のすべてが異なる人の場合です(図表④)。
贈与税は、 受取保険金額から基礎控除の110万円を引いた金額に10% 〜 50%(贈与金額による)の税率がかかります。相続税や所得税と比べて税負担が非常に大きいため、注意が必要です。
(5)上手く保険を活用すれば1,220万円の贈与税が不要に
では、死亡保険金3,000万円、累計払込保険料950万円の例で計算しましょう。その場合、
- 相続税………………0円(他の財産はないと仮定)
- 所得税・住民税……約277万円(仮の所得はないと仮定)
- 贈与税………………1,220万円(他の贈与はないと仮定)
いかがですか。このインパクト! 特に保険が嫌いなご主人の場合、このような贈与税の対象になってしまうケースが多いようです。すなわち主人は保険が嫌いなので私(妻)が夫に保険をかけるしかない→せめて受取人は子供にしてあげよう→贈与パターンの完成となります。
- (6)受取人の名義変更で大丈夫——損な既契約は変更できる
では、わが家の保険証券を確認したところ、贈与パターンだった場合、どのように対応すればいいのでしょう。解約して新たに保険に入り直さなければならないのか…。そんな不安にかられかねませんが、心配することはありません。
契約者と受取人は加入後であっても変更することができるためです。たとえば、④の受取人を子から妻にかえておけば、万一のときには、所得税・住民税の対象になります。
★ 〈契約形態別の課税関係の表〉
契約者 (保険料負担者) 被 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 | |
---|---|---|---|---|
満期 保険金 | A | - | A | 所得税(注1) |
A | - | B | 贈与税 | |
死亡 保険金 | 夫 | 夫 | 妻 (相続人) | 相続税 (生保非課税あり)① |
夫 | 夫 | 相続人 以外 | 相続税 (生保非課税なし)② | |
妻 | 夫 | 妻 | 所得税 住民税 (一時所得)③ | |
妻 | 夫 | 子 | 贈与税④ |
(注1) 課税関係
(1)保険期間(解約期間)が5年以下で一時払い等一定の要件のもの
差益に対して20%源泉分離課税
(2) 上記以外
一時所得=(受取保険金-払込保険料-50万円)
(注)1/2が課税対象