Q.納税資金対策を教えてください。
A.自社株は市場での取引が行われていないため、換金性が低い財産です。しかし、発行会社への譲渡や物納を行うことにより、相続税の納税資金対策に使う方法もあります。
(1) 金庫株の活用
平成13年の商法改正により、会社は自己株式を自由に取得・保有することができるようになりました。取得した自己株式を金庫株と呼びます。
・換金が困難な自社株をお金に換え、相続税の納税に充てることができます。
①みなし配当の不適用
通常、株式をその発行会社に譲渡した場合には、資本金等の額を超える部分については、「みなし配当」と呼ばれ、配当金としての課税(総合課税・最高税率50%)が行われ、税負担が重くなります。しかし、下記の要件を満たす者が、相続により取得した自社株を発行会社へ譲渡した場合には、みなし配当にはならず、全額が譲渡所得として課税(分離課税・税率20%)されます。
①相続又は遺贈により財産を取得し、納付する相続税があること
②相続税の申告期限後3 年以内に譲渡すること
なお、この適用を受けるためには譲渡するときまでに(一定の事項を記載した届出書)を発行会社に提出する必要があり、発行会社は、当該届出書を譲り受けた日の翌年の1月31日までに所轄税務署に提出する必要があります。
②相続税の取得費加算の特例
相続財産について相続税の申告期限後3年以内に譲渡した場合には、譲渡所得の計算上控除する取得費に、譲渡した資産に対応する相続税額が加算され、譲渡所得税の負担を軽減することができます。
(2) 物納の活用
平成18 年の税制改正により、物納財産が明確化され、非上場株式の物納が容易になりました。
①物納の要件(金銭納付困難事由)
相続税は、原則として金銭で一括して納めなくてはなりません。
一括納付できない部分については、最大20年の分割払いによる延納を検討し、延納によっても金銭で納税できない部分の税額に限り、物納が認められます。
②物納財産の順位
物納に充てることができる財産には、順位があります。
第1順位
① 国債、地方債、上場株式等、不動産、船舶
② ①のうち劣後財産
第2順位
③ 社債、株式、証券投資信託
または貸付信託の受益証券
④ ③のうち劣後財産
第3順位
⑤ 動産
自社株は第2順位に該当することから、物納に充てることができる不動産や国債などがない場合に限り、物納に充てることができます。
(注)譲渡制限株式は物納することができません。物納するためには定款の変更などが必要となります。
③物納後の処分
物納された自社株は、原則として一般競争入札により処分されます。好ましくない者に株式が渡らないようにするためには、「随意契約適格者」(物納申請者、その発行会社、主要株主、役員など)
が物納税1か月以内(※)に一定の書類を提出し、原則として収納日から1年以内に買い戻す必要があります。
※理由:「物納等有価証券に関する事務取扱要領について(H22.6.25 財理2532号)」による手続きは迅速に行う必要があるため追加すべきと考えます。